|
■第6回ワールド・キャロム・チャンピオンシップ |
第6回ワールド・キャロム・チャンピオンシップが、2012年10月31日〜11月4日にスリランカ最大の都市コロンボで盛大に開催された。ワールド・キャロム・チャンピオンシップはICFが主催する3つの国際大会のなかで最も権威のある大会とされている。今回のワールド・キャロム・チャンピオンシップには、18か国から、80人以上のプレーヤーが参加した。試合会場は宿泊先でもある「ガラダリ・ホテル」のバンケット・ホール。ここで、5日間にわたって熱戦が繰り広げられた。
今大会は、ポーランド、チェコ、カタール、バングラデシュが初めて国際大会に出場し注目された。また、初出場ではないものの、男女ともフルメンバーのマレーシアにも注目が集まった。大会期間中の主なスケジュールは次のとおりである。
10月31日(水) |
開会式、 ダブルス戦(男女別) |
11月1日(木) |
チーム戦(男女別) |
11月2日(金) |
スイス・システム戦(男女混合) |
11月3日(土) |
シングルス戦 予選(男女別) |
11月4日(日) |
シングルス戦 準々決勝〜決勝、 閉会式 |
トーナメント初日の10月31日、コロンボは熱帯モンスーンの激しい嵐にみまわれ、ホテルから一歩も出られない状態。しかし、キャロム・プレヤーは早朝から夜遅くまで試合をしたり観戦したりしているので、暴風雨はあまり関係ない。開会式は、打楽器を打ち鳴らしながら登場する勇猛な民族舞踊のダンスで幕を開けた。
開会式に続いて、初日のプログラムであるダブルス戦が開幕。日本の男子ペアは松原さんと柴野会長で、イタリアのペアとの対戦である。イタリアはパウロ・マルチネリ会長とスリランカ出身のアミシャ。練習なしのいきなりの対戦ではあったが、互角の勝負となった。攻撃が特徴の日本ペアと防御の巧みなイタリア・ペアの試合は、僅差でイタリアに軍配が上がり予想外の滑り出しとなってしまった。一方、女子はマレーシア・ペアとの対戦で、こちらも一進一退の攻防。日本の女子はダブルスの練習をよくしていたので期待されたが、マレーシアはなかなかしぶとく、独特の戦略で向かってきたため、思うように得点できず惜敗した。
会場には、スリランカのプレーヤーの友人・知人をはじめ、多くの見学者が訪れ、試合に見入っている。特にスリランカのプレーヤーが出る時は、ボードの周りに何重もの人垣ができる。学校のキャロム・クラブの子供たちも先生に引率されて見学に来ていたが、さすがキャロムをよく知る国だけあって、試合中はみな静かに観戦していた。
2日目の11月1日は国別のチーム戦。日本の女子は3人いるので出場資格があるが、男子は2人なので、エントリーの段階では出場資格がなかった。しかし、当日になって2人でも参加できることが認められた。1国から3人が出場し2勝した国が勝ちとなるので、2人しか出ない場合は2人とも勝たなければ勝ち上がれない。それでも試合ができるのは幸いと、早速、出場の手続きをとった。最初の対戦相手はアメリカ。国内予選を勝ち抜いてきた強豪が揃い、勝ち目は薄いが、対戦できるのはありがたい。予想どおり得点は難しかったが、アメリカとの戦いはよい経験になった。次の相手はインド・チーム。これはさすがに別格だった。女子は、初戦はマレーシア、第2戦はスリランカと対戦。残念ながら勝ち進むことはできなかった。
3日目は、スイス・システムによる男女混合の試合。1ラウンドごとにランキングが発表される。普段は対戦することのないプレーヤーと対戦するチャンスがあるので、大会の中でも楽しめる試合である。
さて、メインイベントは4日目、5日目の、男女別のシングルス戦。世界チャンピオンを決める大事な試合は、まず、男子16ブロック、女子4ブロックでリーグ戦を行い、各ブロックの上位2人が、決勝トーナメントの勝ち抜き戦へと進む方式である。
ここで日本初の快挙があった。松原さんがリーグ戦を2勝1敗で突破し、ベスト32に進出したのである。日本人プレーヤーが、決勝トーナメントに進んだのは初めてのこと、これから日本でキャロムを広めていくための大きな弾みになりそうである。
男子シングルスは、スリランカのニシャンタ・フェルナンドが、インドのバリタダサンを下し、これまでインドが守ってきたシングルスの王座を初めて奪取。キャロム大国インドを破ったことで、会場は興奮の渦に包まれた。スリランカ・チームの面々や見学者は、会場からロビーまでなだれ込み「スリランカ!スリランカ!」の叫びで、一時は騒然とした雰囲気になった。キャロムというのは、つまり、これらの国にとってはこれほど大きな存在の競技なのである。女子の世界チャンピオンは、インドのラシュミ・クマリ。女子は1位から4位までをインドが独占した。まだ、インドとスリランカの間には大きな力の差があるようである。
シングルス戦の決勝の後、同じ会場で5日間の大会を締めくくる閉会式が行われた。各国の民族衣装で集まるプレーヤーもいて、試合会場が一転、華やかな雰囲気になる。開会式の時と同じくスリランカの民族舞踊などが披露され、各試合の上位プレーヤーの表彰、スタッフへの謝辞などと進み、最後は各国のプレーヤーの写真撮影と自由な交流会、そしてダンスパーティーで幕を閉じた。
これだけの大会を主催し、成功させたスリランカ・キャロム連盟の力には驚くばかりである。スリランカでは、キャロムに対して国の援助もあると聞く。すべての試合についたアンパイアはスリランカの若いプレーヤーたちで、試合中は真剣だがほかの時間はとてもフレンドリーで協力的。スリランカのキャロムの裾野の広さに改めて驚く。1人でも多くの日本のプレーヤーに、このような国際大会を経験してもらいたいと、今回、また思いを強くした。
|
|